減点ロジック解説 / 2026-06-13
再建築不可物件の買取上限
セットバック・43 条但し書き・隣地集約の経済性
著者: wakeari 編集部 / 推定読了時間 10 分
1. 建築基準法 42 条 + 接道義務 2m の要件
「再建築不可」とは、現存する建物を取り壊した後に新築できない物件を指す。原則として建築基準法 43 条で「建築物の敷地は道路に 2m 以上接していなければならない」と定められており、この要件を満たさない物件が該当する。
| 条文 | 道路の種類 | 再建築 |
|---|---|---|
| 42 条 1 項 1 号 | 公道 4m 以上 | 可 |
| 42 条 1 項 2 号 | 開発許可道路 | 可 |
| 42 条 1 項 3 号 | 既存道路 (基準時に存在) | 可 |
| 42 条 1 項 5 号 | 位置指定道路 | 可 |
| 42 条 2 項 (みなし道路) | 幅員 4m 未満で基準時に建物存在 | 可 (セットバック必要) |
| 42 条非該当 | 私道・通路・接道 2m 未満 | 不可 (43 条但し書き要) |
2. 再建築不可の市場相場 = 整形地相場 × 0.4-0.6
不動産流通研究所 / 業界誌の公開データを集計すると、再建築不可物件の市場価格は周辺の整形地相場の 40-60% の範囲で取引される。
- 接道幅 1.5m 以上 + 道路台帳記載あり: 50-60% (救済可能性が比較的高い)
- 接道幅 1.5m 未満 or 通路扱い: 40-50% (救済策が限定的)
- 無接道 (旗竿地で奥地のみ): 30-40% (敷地集約 or 隣接ロット交換が前提)
3. 救済策別の経済性分析
3.1 43 条但し書き許可
| 申請費 | 建築士事務所 30-80 万 (+ 確認申請費 別途) |
| 期間 | 建築審査会の同意 → 特定行政庁許可 1-3 ヶ月 |
| 可決率 | 特定行政庁の包括同意基準を満たせば 60-80% (満たさない場合 30%) |
| 許可後の価値 | 整形地相場 × 0.85-0.90 (条件付き許可のため若干低い) |
3.2 接道部の隣地買取
| 買取単価 | 1 坪 50-200 万 (周辺相場の 1.5-2 倍、隣地所有者が交渉力を持つ) |
| 必要面積 | 接道 0.5m 不足の場合: 接道部 ~ 0.5 坪 × 道路面に沿った長さ |
| 期間 | 交渉 3-12 ヶ月 (隣地所有者の意向次第) |
| 成功確率 | 隣地所有者の事情次第 (30-60%) |
3.3 隣地集約 (整形化)
| 集約後の価値 | 整形地相場 × 1.5-2.0 (合体プレミアム) |
| 投資総額 | 対象敷地 + 隣地 × 1.3-1.5 (説得プレミアム) + 諸経費 |
| 期間 | 12-36 ヶ月 |
| 期待 IRR | 年率 15-30% (案件成立時) |
4. 救済策込みの買取上限算定
wakeari は救済策ごとに「成功確率 × 成功時価値 + 失敗確率 × 失敗時価値 - 救済コスト」で期待価値 (EV) を算出し、最大の EV を取る救済策をベースに買取上限を提示する。
EV(救済策) = 成功率 × (整形地相場 × 救済後係数 - 救済コスト)
+ (1 - 成功率) × (再建築不可相場 - 救済コスト)
例: 接道 1.5m 戸建 (周辺整形地 2,500 万 / 再建築不可相場 1,250 万)
43 条但し書き: 0.65 × (2,500 × 0.88 - 80) + 0.35 × (1,250 - 80) = 1,825 万
隣地買取: 0.40 × (2,500 × 0.95 - 300) + 0.60 × (1,250 - 300) = 1,419 万
→ 43 条但し書きを推奨、買取上限 = 1,825 × 0.85 = 1,551 万
5. wakeari の自動判定 (公図 + 42 条道路 R2)
wakeari は公図 (全国 154 ward)と建築基準法 42 条道路の GeoJSON (品川区・名古屋市カバー、順次拡大) を R2 に統合し、物件の接道状況を自動判定する。
- 物件 polygon と 42 条道路 line の最近傍距離計算 (5m 以内なら 42 条 1 項道路に接道とみなす)
- 接道幅の推定 (polygon の境界長 ∩ 道路 buffer 2m)
- 再建築可否の暫定判定 → 再建築不可なら救済策別の EV 計算
サンプル SAMPLE 02 横浜市保土ケ谷区 再建築不可戸建 で実例を公開しています。
6. 結論 — 救済策の経済性を定量化することが買取上限の鍵
再建築不可物件は「相場 × 0.4-0.6」という単純なヒューリスティックでは適正買取上限を見誤る。救済策別の成功確率 + 成功時価値 + コスト + 期間 を物件ごとに当て込んだ EV ベースの算定が、薄利モデルでの利益率確保と機会逸失回避の両立に直結する。